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環境ノートNo.7  ゼロカーボン(3)

環境ノートNo.7  ゼロカーボン(3)

まんぼう

 

  前回までに、人間の活動が地球に大きな影響を及ぼし、人間は地球から気候変動・地球温暖化のしっぺ返しの応答があったこと、そしてその応答を緩和するために各国がゼロカーボンの取り組みを始めたことについて述べました。今回は、ゼロカーボンに対する日本の取り組みと課題について見ていきましょう。

 

3.日本のゼロカーボンへの取り組みと課題

 

<日本の温室効果ガス排出量の現状>

  ゼロカーボンへの取り組みに入る前に、日本の温室効果ガス(GHG)排出の現状を押さえておきましょう。日本のGHGのCO2換算排出量は2013年の14億800万tをピークに2019年には12億1200万t*10)にまで減少45)していますが、ゼロカーボン宣言の下では、2050年までにこのGHGを吸収・除去しながらネットの排出量を差し引きゼロにしなければなりません。

 

  日本のGHG排出量の内訳を図-9に示します46)。図中の用語は以下の通りです;

・エネルギー転換部門:発電所・製油所などエネルギーを作り出す所からの排出量・産業部門:エネルギーを使ってモノを作り出す製造業・農林水産業・鉱業・建設業からの排出量・運輸部門:旅客・貨物の輸送業からの排出量

・業務部門(第三次産業):情報通信や電気・ガス・水道業、金融・不動産業、宿泊・飲食業、教育・医療、公務などからの排出量

  これら4部門と家庭部門を合わせた5部門の排出量を「エネルギー起源」と呼び、合計排出量は10.9億tとなり全排出量12.1億tの90%を占めます*11)。ゼロカーボンのために日本が注力しなくてはならない部門です。ちなみに、図に記載されているその他の部門の説明は注釈*12)を参照してください。

図-9 日本の温暖効果ガス(GHG)排出量の内訳(2019)(文献46)より筆者作成)

 

 

*10)2019年度の日本のGHG排出量12.1億tのうちCO2は11.1億tで94%となります46)

*11)同じことを、CO2のみで議論すると、2019年の全排出量は11.1億t、エネルギー起源の排出量は10.3億tで、全体の93%となります。GHGやCO2の使い分けは紛らわしいですね。

*12)「工業プロセス及び製品の使用」とは、セメント、ガラス、アンモニア、金属の製造や溶剤の使用などによる排出量のことです。これにエネルギーに利用しない「廃棄物」焼却や「その他」の排出量を併せて、「非エネルギー起源」と呼びます。

 

<日本のゼロカーボン基本戦略>

  日本の現状を紹介する場合、政府が使用する言葉がゼロカーボンでなくカーボンニュートラルなので、ここではそれに従います。

 

  菅前総理大臣は2020年10月26日の所信表明演説において、2050年カーボンニュートラルを宣言しました。その直後の 12月、政府は2050年カーボンニュートラルへの挑戦を「経済と環境の好循環」につなげるための産業政策として、「グリーン成長戦略」を策定し、2兆円の「グリーンイノベーション基金」を予算化しました(環境ノートNo.7(2)表-2参照)。この2兆円を呼び水として、15兆円とも想定される民間企業のイノベーション投資を引き出すことが狙いです。グリーン成長戦略では、図-10に示すように今後成長が期待される14の重要分野を示し、「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」を創設して10年間で1.7兆円の民間投資創出効果を目指しています47)

図-10 グリーン成長戦略「実行計画」の14分野47)

 

  日本が目指していた2030年の再生可能エネルギーの目標値は、2019年度22-24%であった数値を、2021年の第6次エネルギー基本計画では、36-38%と10ポイントアップしています48)

 

<ゼロカーボンのテクノロジー>

  図-11に経産省が示す、グリーン成長戦略に則った脱炭素技術のリスト49)を示します。リストに挙げられているものは、どれも可能性のあるものばかりですが、コストやインフラ整備、信頼性などの課題が山積しています。しかも、2030年、2050年までという極めて厳しい期限が待ち受けています。

図-11 カーボンニュートラルに向けた主要分野における日本の取組49)

 

  期待される脱炭素技術は図に示すように多岐にわたりますが、ここでは再エネ(再生可能エネルギー)、水素、アンモニア、CCUSなどに絞って概要と課題に触れてみます。

(1)風力発電・太陽光発電

  風力・太陽光は再エネの切り札ですが、課題はコストと電力系統、環境、変動調整です。

 

  1)コスト50):表-5に2020年時点での日本の再生可能エネルギーによる発電コスト*13)と、2030年での予測コスト51)を掲げます。太陽光・風力(陸上)共に法制面(固定買い取り制度など)の支援と大量普及によりコストダウンが実現していますが、既存の発電コスト(原子力10.1円/kWh、石炭火力12.3円/kWh、LNG13.7円/kWh)52)などに比べ、大きな割高感を感じます。

 

表-5 日本の再生可能エネルギーによる発電コスト51)

  これに比べ、世界の風力・太陽光は技術革新と大量普及により近年驚くほどコストが低減しています。その様子が図-12に表れています53)。図によれば風力(陸上)・太陽光ともに5円/kWhのレベルに達しており、日本の1/2〜1/3のレベルにあります。日本の再エネ産業の国際競争力の低さが問題となっています。

図-12 世界の主要エネルギーによる発電原価の推移(wikipedia 53より作成)

 

  風力発電は陸上立地の余地が少なくなり、現在洋上風力が急速に開拓されていますが、洋上風力は基礎やケーブルを海底に設置しメインテナンスのために船団が必要となるなど、初期投資も運用費用も陸上風力に比べ高くなります。それでも、欧州では1980年代前半から洋上風力発電の導入が広がり、着底式風力の発電コストの平均は8.6円/kWhに下がり、さらに大水深に適した浮体式風力も急速に普及しつつあります。これに対して、日本では、2020年から開始された公募では入札上限価格が、着床式29円/kWh、浮体式36円/kWh 54と、洋上風力の場でも諸外国に遅れを取っています。

 

*13) 発電コストは均等化発電原価(LCOE : Levelized Cost Of Electricity)で表しています。LCOEとは発電 にかかる 費用 を総合的に評価する 指標で、施設建設費など初期費用、燃料費・保守管理費などの ランニングコスト 、 解体 ・廃棄費用などを合計し、運用期間中に得る発電量で割って算出されます。

*14)尖頭負荷発電:電力需要が急激に高まった尖頭期(ピーク時)にだけ運転する。時折運転するだけなのでキロワットあたりの料金は割高です。

 

  2)電力系統55):発電、送電、変電、配電を統合したシステムのことを「電力系統」と呼びます。電気は、需給のバランスが崩れると周波数に乱れが生じ、接続している機器に悪影響を与え、最悪の場合は大規模停電につながります。電力系統が「メッシュ状」になっているヨーロッパでは、他の国やエリアとの電気の融通が簡単にできるので需給のバランスを取りやすいですが、日本は縦に細長く、離れたエリア間で大容量の電気を融通することが難しいという問題があります。需給バランスをとるために様々な対策(優先給電ルール、火力発電、送電上のルールなど)をとっていますが、連携線の増強には大きな投資も必要となります。再エネの変動を調整するためには、大型の蓄電施設が必要です。

 

  3)環境:政府はFIT(固定価格買取制度)により普及拡大を払ってきたものの、近年森林を切り開いて太陽光パネルを設置することによる防災面や地下水汚染、景観悪化を懸念する設置予定地の地元から反対が起こり、計画が挫折するケースが相次いでいます。これについては、環境ノートNo.1でも紹介しました。風力発電も同様で、陸上風車では設置に伴い道路や風車用地の確保のため森林伐採が伴うこと、洋上風車では漁業従事者との協調が必要です。現在、秋田沖、青森沖、銚子沖、長崎沖などで洋上風力の設置が進んでいますが、一部では漁業者との不況和音が聞こえてきます。

 

  4)変動調整:出力が日照時間や風速の影響を受けて変動するため、電力の需給バランスをとるためにすぐに稼働できる火力発電所が必要となります。火力発電所は従来のような石炭や天然ガス燃焼によるものはゼロカーボンにそぐわないため、水素やアンモニア混焼・専焼のタービンを持つ発電所が必要です。現在、各社でそのコスト面を克服する技術開発が行われている最中です。

(2)水素

  水素については環境ノートNo.7(2)表-3で中国の生産状況に大きく立ち遅れていることを述べましたが、グリーン水素の製造に必要な電気分解装置に関しても、EUが2030年40GWの導入目標を持っているのに対して、日本は明確な目標がなく、現在ある福島水素エネルギー研究フィールドの電気分解容量は10MW(0.01GW) 56にすぎません。

水素社会には、製造、貯蔵、運搬、利用全ての分野で新しい技術が必要とされ、日本は技術面では進んでいますが、コスト面の克服が待たれます。

 

  1)水素の製造57):図-13に水素の製造方法を示します。水素の製造は下の4通りで行われます。

図-13 水素の製造方法57)

 

  図-13の上二つ、石炭・石油・天然ガスなど化石燃料から作る場合と工業プロセスの副生ガスから作る場合(グレー水素)は、CO2が排出されるためCO2回収・ 貯留技術 (CCS : Carbon Capture and Storage) との組み合わせが 必要です。

 

2)水素の貯蔵58):水素は非常に軽いガスなので貯蔵には以下の四種類の方法がとられます。

①高圧で圧縮して貯蔵:水素を高圧で圧縮して金属容器にためる方法です。高圧だと水素が金属表面に入り込んで金属が脆くなる(水素脆化)という性質があるので、特殊ステンレス鋼やアルミニウム合金、高分子複合材料などを用います。

②液体にして貯蔵:-253℃まで水素を冷却して液体にしたあと、真空エリアを挟んだ二重構造の容器に入れて保管します。しかし、水素は温度上昇や振動で気化するので、気化した水素ガスを安全に取り除く技術や、より真空に近づけ気化量を減らす研究開発が進められています。

③金属に水素を吸蔵させて貯蔵:一部の金属合金が大量に水素を吸収することが1960年代に発見されました。このような性質を持つ合金は水素吸蔵合金と呼ばれています。現在知られている水素吸蔵合金は、金属重量の1~3%程度のものがほとんどですが、1%の吸収量でも液化水素や高圧水素より体積あたりの水素量は多くなります。しかし、重量あたりの水素量は液化水素や高圧水素より少なくなります。コンパクトですが重量が重くなるため、移動しない固定タイプの水素貯蔵施設向きといえます。カーボンナノチューブや非常に表面積の大きな分子の表面に水素を吸着させて貯蔵する方法も研究されています。

④水素を別の物質に変換して貯蔵:たとえばトルエンと反応させてメチルシクロヘキサンに変換して、その状態で貯蔵する方法も研究されています。

 

  水素の貯蔵・運搬に関しては国際配送、国内輸送を一体化したインフラ整備、大型化に備えたパイプライン敷設などの検討が必要です59) 

 

  3)水素の利用60):水素は産業、生活のあらゆる分野で様々な形で使われます。まさに、新しい時代を開く基幹物質といえるでしょう。主な用途は燃料、燃料電池、還元剤などです。水素を燃料として用いる場合は、水素の燃焼速度が速いので燃焼制御の技術開発が必要です。石炭や天然ガスとの混焼は確立した技術ですが、ゼロカーボンが叫ばれる今日、水素専焼のボイラーや内燃機関の開発が進んでいます。水素を空気で燃やす場合、窒素酸化物の発生が課題となります。

  燃料電池車FCVは実用の段階にありますが、大型トラックや船舶のためには、燃料電池の大容量化が必要でスペース効率のよい革新的なタンクが求められます。製鉄の分野では、コークスの代わりに水素を還元剤として使う研究も進められています。図-14に水素が利活用されるイメージを示します61)

図-14 水素の利活用イメージ59) 

 

(3)アンモニア62)

  アンモニアNH3は天然ガスなどに含まれるメタンCH4から分離された水素Hと、大気中の窒素Nを高温高圧で合成して製造します。生産されたアンモニアの約8割は肥料として使われますが、残りの2割は工業用でメラミン樹脂や合成繊維のナイロンなどの原料となります。しかし、ゼロカーボン活動の中で、アンモニアを燃料や燃料電池として使う新たな動きが出ています。

  アンモニアは石炭に近いゆっくりした燃焼速度を持っているため、石炭火力発電所で石炭と混焼を行い石炭火力からのCO2排出量低減に一役買うことが期待されています。しかし今般のゼロカーボンの動きからすると過渡的な役目に過ぎなくなるでしょう。アンモニアも専焼技術の開発が待たれます。アンモニアを燃焼させる場合も、窒素酸化物の生成を抑える技術が必要になります。図-15にアンモニアの利活用イメージ62)  を示します。

図-15 アンモニアの利活用イメージ62)

  アンモニアは常温で気体ですが、常温で8.5気圧または常圧下で-33℃といったマイルドな条件で液化するので取り扱が容易であるため、扱いの難しい水素のキャリア(運び屋)*15)として注目されています。また、液化アンモニアの体積当たりの水素密度は他の水素キャリア(液化水素、有機ハイドライド)と比べて1.7~3倍と大きいので、水素の運搬や貯蔵の効率が優れていると言えます。このようなアンモニアのキャリアとしての特質を生かして、ノルウェイのバレンツ・ブルー・プロジェクトではバレンツ海の天然ガスからアンモニアを生成し、これを輸送した後肥料や燃料として使用するほか、水素に変換して使用する計画です63)。ちなみにアンモニアは、生成過程で発生したCO2をノルウェイのCCS(次項(4)CCS・CCUS参照)拠点であるポラリス貯留層に貯留するのでカーボンニュートラルとみなされ、ブルーアンモニアと呼ばれます。

 

*15)キャリア:エネルギーキャリアとも言います。気体のままでは貯蔵や長距離の輸送の効率が低い水素を、液体や水素化合物にして効率的に貯蔵・運搬する方法です64)。「運び屋」は私がつけたあだ名です。

 

(4)CCS・CCUS

  世界中がゼロカーボンに進むうえで大きく期待されているのは、あらゆる産業分野から発生するCO2を回収してそれを深い地中に貯留するCCS(Carbon Capture  and Storage)です。回収されたCO2の一部を化学合成材料として利用する意味でUtilization という言葉を加えたCCU、CCUSも期待されています。CO2を再利用するという意味で「カーボンリサイクル」とも言われます。

 

  CCSのプロセスは、CO2の分離・回収、CO2の輸送、CO2の隔離・貯留、モニタリング65)です。図-16にCCSのイメージを示します。どの分野も技術的には40年前からノルウェイ、カナダほかで実証されていますが、日本で適用するに当たって課題となるのは、コストと貯留適地(CO2安定貯留)の見通し66)です。

図-16 CCSのイメージ65)

 

  1)CO2の分離・回収:CO2の分離・回収は、アミンや炭酸カリ水溶液を用いた化学吸収、高圧化での液体接触による物理吸収、膜分離、吸着剤を用いた物理吸着、圧縮・冷却と蒸留操作による深冷分離などがあります。これらの技術は確立していますが、コスト改善の技術開発67)が求められています。

 

  2)CO2の輸送68):CO2を液化して液化炭酸ガスとし、パイプラインや船舶、トラックなどで運搬する技術はほぼ確立しています。近年、大型の炭酸ガス運搬船が建造されています。加圧と冷却過程でのコストダウン、運搬途上、接続部でのガス漏れなどが課題です。

 

  3)CO2の隔離・貯留69) :CO2の隔離・貯留は、比較的ポーラス(多孔質)な岩質を持つ地下の帯水層、炭層、石油・ガスの枯渇層への貯留などで行われます。帯水層貯留では帯水層中のCO2は「超臨界流体」*16)になっており、液体と固体の性質をどれだけ安定して維持できるかが問題になります。貯留された筈のCO2が浮上して漏洩することがあってはなりません。そのほか、海底下でCO2をハイドレート化(固体)させて貯留する方法も試みられています。

  世界的には、ノルウエー、カナダを始め多くの石油・ガス田で実績があります。日本では2000年より長岡での帯水層貯留実験、2016年より苫小牧沖の海底下の貯留実験が行われています。しかし、CO2を加圧して地下に注入する際には、圧縮や移送のために多くのエネルギーが必要であり、その際に必要となるエネルギーの量を低減し、効率を上げるための技術開発が大きな課題として残されています。地層が複雑な日本で漏洩がなく長期間安定して貯留できる場所をどのように探すかも大きな課題です。

 

*16)超臨界状態:CO2ガスは常温常圧で気体ですが、加圧すると液体になったり冷却すると固体(ドライアイス)になったりします。しかし、臨界圧力7.38MPa、臨界温度31.1℃を超える領域 では、液体と気体の境界がなくなり、「超臨界状態」になります。超臨界のCO2は、液体のような物質の溶解性と気体のような拡散性を兼ね備えた 特徴を持っています。CCSで検討されているCO2貯留層は、地質の安定した地下1000m以上の深さを対象とするので、水深にして1000mというと100気圧~10MPaの値になり臨界圧力を超える値となります。また、地中深くなると地温が上昇し(温度勾配100m当たり平均30℃)70)、1000m以上の深度では臨界温度を超えることになります。

 

  4)CO2の挙動のモニタリング71) :超臨界状態のCO2が貯留層でどのような挙動をし、地表や海域に漏出してくることがないか十分な解析を行ない、万一に備えたCO2の検知体制が必要です。CCSの安全性は万全でなければなりません。

 

  5)CCUSの課題72) :「カーボンリサイクル」は技術的には可能です。しかし、CO₂のように安定的な物質を水素還元するためには多大なエネルギー投入が必要となります。例えていうなら、氷に熱湯をかけてできた温水を、大量のエネルギーをかけてまた氷と熱湯に戻すようなものであるというたとえで、本格的な実現性に疑問を持つ意見もあります。

 

<長野県の取り組み>

  ゼロカーボンの実現には、経済、産業だけでなく生活を含めたあらゆる分野でCO2排出ゼロ、すなわち「地域脱炭素」73)が求められています。「地域脱炭素」は、今ある技術で取り組み、地域資源を最大限に活用した再エネを選択しながら地域の経済活性化、地域課題の解決に貢献することを目的とします。

  地域脱炭素の一例として長野県の取り組みについて説明しましょう。長野県は2019年12月「気候非常事態宣言-2050ゼロカーボンへの決意-」74)を表明し、同月スペインで開かれたCOP25に参加して県の取り組みを世界に紹介しました75)。図-17はCOP25に際して発表された、長野県のカーボンニュートラル実現計画です。県内で発生するCO2を2030年には1990年比で30%減少、2050年には80%減少に抑制し、残る20%を森林による吸収で実質ゼロを実現する構想です。その後2021年6月には「長野県ゼロカーボン戦略」76)として、以下のような目標を設定しました。

 

・温室効果ガス正味排出量 :2030年までに6割減・再生可能エネルギー生産量:2030年までに2倍増、2050年までに3倍増

・最終エネルギー消費量  :2030年までに4割減、2050年までに7割減

 

  具体的な対策例として、EV(電気自動車)・FCV(燃料電池車)の普及に対応し観光地での電池切れゼロの充電インフラを整備する、公共交通やオンデマンド交通を整備して「歩いて楽しめるまち」や 「持続可能な中山間地」を実現する、 2030年までに全ての新築建築物のZEH(省エネハウス)・ZEB(省エネビル)*17)を実現する、「屋根太陽光発電」と「小水力発電」を一層推進する、地域で生まれる再エネを余すことなく活用するなどが挙げられています。

 

  地方自治体としては野心的な目標と対策ですが、ゼロカーボン実現のためには細かいシナリオに基づく政策シミュレーションと強い政治的リーダーシップが求められます。

 

*17)ZEH:Net Zero Energy House,   ZEB:Net Zero Energy Building

 

図-17 長野県のカーボンニュートラル実現計画 (COP25発表)75)

<ゼロカーボンの実現性>

  各国と日本のゼロカーボンについて述べてきました。ゼロカーボンの運動は2015年のパリ協定に始まり、各国が正面から取り組み始めたのは2年前の2019年頃です。2030年はもう手前まで来ています、2050年も遠くありません。

  今後、ゼロカーボン運動をより具体的に推し進めるためには、活動のシナリオとそれに基づくCO2の削減量とそのために必要な初期投資額およびライフタイムのコストなどの算出が必要です。このほか、テクノロジー開発のための政策的な支援、炭素税の導入、新しい社会に向けたインフラの見直しなどクリアーしなければならない課題は山積しています。

  こういったことを考える上で参考になる本に出合いました。次回で紹介いたします。

 

 

<参考文献>

45)地球環境研究センター,  日本国温室効果ガスインベントリ報告書, 2021 年, 温室効果ガスインベントリオフィス(GIO)編 環境省地球環境局総務課脱炭素社会移行推進室 監修, 図 1 日本の温室効果ガス排出量及び吸収量の推移,  https://www.nies.go.jp/gio/archive/nir/jqjm1000000x4g42-att/NIR-JPN-2021-v3.0_J_GIOweb.pdf

46)国立環境研究所:日本の温室効果ガス排出量データ|アーカイブ|国立環境研究所 (nies.go.jp) https://www.nies.go.jp/gio/archive/ghgdata/index.html

47)資源エネルギー庁:カーボンニュートラルに向けた産業政策“グリーン成長戦略”とは? 2021.5.20 https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/green_growth_strategy.html?ui_medium=tw_enechosp

48) NHK(2021):「エネルギー基本計画」再生可能エネルギー割合36~38%に | 環境 | NHKニュースhttps://www3.nhk.or.jp/news/html/20210721/k10013151741000.html

49) 資源エネルギー庁:2050年カーボンニュートラルの実現に向けた検討, 令和2年11月17日, 資源エネルギー庁https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/033/033_004.pdf

50)経済産業省(2021):基本政策分科会に対する発電コスト検証に関する報告 令和3年9月 発電コスト検証ワーキンググループ https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/mitoshi/cost_wg/pdf/cost_wg_20210908_01.pdf

51)経済産業省(2021):基本政策分科会に対する発電コスト検証に関する報告 令和3年9月 発電コスト検証ワーキンググループ https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/mitoshi/cost_wg/pdf/cost_wg_20210908_01.pdf

52)電源別発電コスト/比較と一覧l電力計画.com (standard-project.net)

53)wikipedia (https://en.wikipedia.org/wiki/Levelized_cost_of_energy)

54)資源エネルギー庁(2021):「洋上風力発電の低コスト化」 プロジェクトに関する 研究開発・社会実装計画(案)の概要 2021年8月 資源エネルギー庁https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/green_innovation/green_power/pdf/002_05_00.pdf

55)資源エネ庁(2017):再エネの大量導入に向けて ~「系統制約」問題と対策|再生可能エネルギー・新エネルギー|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)

56)水素政策の最近の動向等について,  資料2, 2021年8月,  資源エネルギー庁

57) 宍戸哲也他(2020):水素を作る・運ぶ・使う 水素エネルギーの現状と将来, 2020.11.20    https://tokyokankyo.jp/wp-content/uploads/2020/10/01_kouen_suiso2020.pdf

58) 貯蔵 | 水素エネルギー技術 | 水素エネルギーナビ http://hydrogen-navi.jp/technology/storage.html

59) 資源エネ庁(2021):今後の水素政策の課題と対応の方向性 中間整理(案)2021.3.22 https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/suiso_nenryo/pdf/025_01_00.pdf

60) さまざまに広がる水素の用途 |水素マーケット | Iwatani-水素とイワタニ

61) 資源エネ庁:なぜ“水素”なのか|ようこそ!水素社会へ|資源エネルギー庁 (meti.go.jp) https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/hydrogen/overview/

62)資源エネ庁(2021):アンモニアが“燃料”になる?!(前編)~身近だけど実は知らないアンモニアの利用先|2021-01-15  https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/ammonia_01.html

63)Offshoe Engineer:Horisont Energi, Equinor, Vår Energi in Polaris Carbon Storage Pact December 10, 2021

64)J-Net21ホームページ:エネルギーキャリアとは,

https://j-net21.smrj.go.jp/development/energyeff/Q1271.html

65) 環境省(2017):我が国におけるCCS事業について 平成29年9月5日 環境省地球環境局 http://www.env.go.jp/council/06earth/y0618-17/ref01.pdf

66)地球環境産業技術研究機構(RITE):RITEにおけるCCS技術の現状と課題,

67)資源エネルギー庁(2015):CO2回収、利用に関する今後の技術開発の課題と方向性, 平成27年6月  https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment/jisedai_karyoku/pdf/002_01_00.pdf

68)石井希実子他(2011):CCSのためのCO2輸送方法の考察)http://www.fract.t.u-tokyo.ac.jp/lectures/prj2010.pdf

69) 国立環境研究所:CO2回収・貯留(CCS) – 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア (nies.go.jp) https://tenbou.nies.go.jp/science/description/detail.php?id=27#1

70)コトバンク:岩石学辞典「地下増温率」

71) 山本肇ほか(2008):地球シミュレータを用いた CO2地下貯留シミュレーション , 大成建設技術センター報 第 41 号(2008), pp.03-1-6

72)  気候ネットワーク(2019):CO₂回収・利用・貯留(CCUS)への期待は危うい , Position Paper 2019,  2019 年 6 月 https://www.kikonet.org/wp/wp-content/uploads/2019/06/2019-position-paper-CCUS.pdf

73)「地域脱炭素ロードマップ」【概要】国・地方脱炭素実現会議 令和3年6月9日 ~地方からはじまる、次の時代への移行戦略~ PowerPoint プレゼンテーション (env.go.jp)

74) 長野県(2021):「気候非常事態宣言 -2050ゼロカーボンへの決意-」について  https://www.pref.nagano.lg.jp/ontai/climateemergency.html

75) 長野県:長野県における地域循環共生圏の取組, 長野県環境部環境エネルギー課 PowerPoint プレゼンテーション (nagano.lg.jp)  https://www.pref.nagano.lg.jp/ontai/documents/cop25japanese.pdf

76)長野県:「長野県ゼロカーボン戦略」, https://www.pref.nagano.lg.jp/kankyo/happyou/20210608presss2.html

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