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環境ノートNo.6  海洋プラスチック(1)

環境ノートNo.6   海洋プラスチック(1)

まんぼう

 

  2020年7月1日よりスーパーでのレジ袋が有料になりました。海洋プラスチックの原因となるプラスチックごみの問題に対処するための政策といわれています。確かに海岸に打ち上げられたプラスチックごみの写真には眉をひそめますし、漁網に絡まった亀の姿は哀れです。魚や貝がプラスチックを誤飲する状況にはじっとしていられません。しかし待てよ、海洋プラスチックとレジ袋との間にどれだけのつながりがあるのだろうか、レジ袋の有料化で海洋プラスチック問題が本当に解決に向かうのだろうか、政府や国際社会はどれだけ本気なのだろうか?疑問に答えようとウェブサイトでブラウジングを始めたら、レジ袋以前の、ごみやリサイクルの問題に次々と行き当たりました。4回にわたって、ごみ処理、廃プラスチック処理、海洋プラスチックの現状と対応策について述べます。

漁網に絡まり溺死したオサガメ1)

1.日本が出す廃棄物(ごみ)とその行方

  レジ袋の有料化の是非を検討するために、まずプラスチックのごみが全体のごみの中でどれくらいの割合を占めているのか知ることにしました。

 

<廃棄物とは>

  廃棄物は法律の定義上、産業活動によって物を作る段階で排出される「産業廃棄物(産廃)」と、それ以外の「一般廃棄物(一廃)」(家庭や事業所など)に分類されます2)。図-1に示すように、毎年4億tにも上るごみが排出され、特に産廃の排出量は一廃の10倍のオーダーです。この膨大なごみを「適正」に管理することが環境行政上重要で、1972年これまでの清掃法を全面改正して、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)2)が公布されました。この法律では、産廃については事業者に対して「自ら処理しなければならない」、一廃については地方自治体に対して「市町村は、当該市町村の区域内の一般廃棄物の処理に関する計画を定めなければならない」と、事業者や行政に対してごみ処分の責任を示しています。

  法的な定義はさておき、このノートでは私たちの生活により身近な一般廃棄物から先に説明していきましょう。また、ごみと廃棄物は厳密には言葉を使い分けなければならないようですが、ここでは混同して使うことにします。

  日本で1年間に排出される廃棄物量を2018年(H30)度統計値として図-1に示します。前述したように、一般廃棄物4,272万t、産業廃棄物3億7,883万t、合計4億2,155万tに上ります3)

図-1 廃棄物の年間排出量3)(資源・リサイクル促進センターホームページより)

<廃棄物の処分方法>

  一般廃棄物は市町村の責任で、市長村が作ったごみ処理施設などに集めて処理されます。ごみ処理の流れを、一例として木更津市のホームページより図-2に示します4)。家庭や事務所からのごみは、燃やせるごみ、燃やせないごみ、粗大ごみ、資源ごみなどに分けられ、リサイクル、焼却、溶融などの工程を経て、資源となるものは再生利用、燃えるものは熱利用、燃えないものや焼却残渣(灰)は最終処分場で埋め立てられます。図-2の「資源ごみ」の中の、びん、かん、ペットボトル、容器包装プラスチック、段ボール、紙パックなどは「容器包装」と呼ばれるごみで、次の<一般廃棄物のリサイクル>で詳しく述べます。なお、上に示した分別区分は市町村によって多少異なっています。

図-2 君津地域広域廃棄物処理の流れ4) (千葉県木更津市公式ホームページより)

  冒頭に説明したように、産業廃棄物は事業者の責任で処分されます。一般廃棄物と同様に、直接資源に回すもの(再生利用)、分別や破砕、圧縮などの中間処理を経て再生利用に回すもの、直接最終処分(埋立)に回すもの、焼却した後、灰などの残渣を最終処分に回すものなどに分けられます。

  一廃でも、産廃でもごみ処分がこの流れに沿って「適正に」実行されるのなら、公園や道路、川の中にごみが散らばることはないでしょう。しかし、実際私たちが目にする街の実態はそれとは大きくかけ離れています。ごみが「適正に」処分されない過程については次回(2)以降で触れていきます。

 

<一般廃棄物のリサイクル>

  ごみ処分に関しては、最終処分場である埋立地の空き容量が少なくなってきたことを直接の動機として、一般廃棄物の減量と資源の有効活用・循環型社会形成のため1995年容器包装リサイクル法*1)、2000年資源有効利用促進法などが制定されてきました。

  しかし、現状のリサイクル率*2)は環境省の2018年統計によれば19.9%と低く5)、図-3に示すようにEU諸国の40~60%と比べると大きく見劣りがします。これについては、国立環境研究所の河合氏はごみ処分方法の違いが大きく寄与していると述べています6)。すなわち、日本ではかって埋立処分場がひっ迫していたため、リサイクルよりも「焼却」がごみ処理の主流になっており、実際、日本の焼却処理率は76.2%に対してEU諸国は30~40%の数値だそうです。

  ちなみに、焼却による熱利用はサーマルリサイクル(サーマルリカバリー)と呼ばれていますが、環境省のリサイクル率には、EUと同様、熱利用分は含まれていません。

  サーマルリサイクルは、発電や温水プールなど日本では大いに発達していますが、今般のゼロカーボンの動きからするとこれまで通りには推奨しにくく、根本的な3R(Reduce, Reuse, Recycle)の取り組みが求められます。

図-3 日本とEU加盟国におけるごみのリサイクル率(%)(2018年統計値)6)

*1)容器包装リサイクル法7):循環型社会形成の推進に関する法体系の一つとして、1995年(H7)に制定されたものです。家庭から一般廃棄物として排出される「容器包装」廃棄物をリサイクルすることで、ごみの減量と資源の有効活用を図ります。この法律により、家庭からの「分別排出」と市町村の「分別取集」、さらに事業者の「再商品化」が義務付けられました。「容器包装」とは、商品の容器と包装のことで、中身を取り出して使い終わったら「不要になる」もののことです。ガラスびん、ペットボトル、ティッシュペーパーの紙箱、包装用の袋、プラスチックの袋、刺身の発泡スチロールトレイなどがその例です。アルミ缶・スチール缶・飲料用紙パック・段ボールは、市町村の分別収集の対象にはなっていますが、法律制定当時、すでにリサイクルのシステムが構築され有価で取引されていたため、再商品化義務の対象外となっています8)

*2)リサイクル率:環境省では以下のように定義しています。

  リサイクル率(%)=総資源化量÷総ごみ排出量×100

  この定義に沿って2018年度の一般廃棄物のリサイクル率を計算すると、ごみ総排出量 4,272万トン、総資源化量 853 万トン、リサイクル率 19.9 %となります5)

<産業廃棄物のリサイクル>

  図-1に示したように日本のごみの総排出量の90%を占める産業廃棄物とは、あらゆる事業活動に伴って生じる廃棄物のことで、廃棄物処理法で20種類の廃棄物が規定されています。図-4に2016年度(H28)の産業廃棄物の種類別排出量を示します9)。最も多いのは汚泥で全体の43%を占め、さらにその汚泥の由来は上下水道事業が半分以上を占めることが分かります。

  産業廃棄物は、事業者が責任を持って処理するので基本的にはごみが市中に散らかるようなことはなく、多くのものが再生利用されます。

  環境省の2019年度統計によると産業廃棄物の再生利用量は、総排出量約3億7,975万tトンのうち2億0,038万t(全体の 53%)でした。種類別にみると、再生利用率の高い廃棄物は、がれき類の 96%(約 5,821万t)、動物のふん尿の 95%(約 7,690万t)、金属くずの 94%(約 680万t)、鉱さいの 92%(約 1,221万t)となっています10)

図-4産業廃棄物の種類別排出量(2017年度)9)

<エコスラグ>

  廃棄物有効利用の一例として「エコスラグ」という商品を紹介します。一般および産業の廃棄物の焼却残渣(飛灰など)はこれまで埋め立てられていましたが、処分地ひっ迫への対応から、焼却残渣の容量を更に減少させるために、2000年ごろから高温の溶融炉を使って焼却残渣を溶融した後固化した「溶融スラグ」を土木・建築材料として「再資源化」することが行われるようになりました。このスラグは「エコスラグ」と呼ばれ、天然の砂や砕石の代わりとして、道路工事、港湾工事、コンクリート二次製品などに使われています。筆者はエコスラグの物理的、化学的性質が天然材料とそん色ないものであること、海岸の養浜材料として使っても海洋生物に影響を与えないことを実証する研究に加わった経験があります10)

  エコスラグの生産量は2008年で86.6万tと、ごみ最終処分量の10%程度を占めていましたが、近年減少傾向にあり2019年には67.1万tにまで減少しています11)。ごみの焼却量の減少に加え、溶融に大きなエネルギーを必要とすることも一因と推察します。近年のゼロカーボンの動きから見ても今後生産量の増大は見込めないでしょう。

  「ごみ処理」は長い間の経験の蓄積をもとに、業者-行政-市民の連携のもとに精緻な処理システムが出来上がっていることがわかりました。それにもかかわらず海洋プラスチックが問題になるのはなぜでしょう。次回以降に考えていきましょう。

  日本におけるごみの「リサイクル」の大半は焼却による「熱リサイクル」ですが、最終処分場(埋立地)がひっ迫する我が国とっては有用な政策手段だったと思います。しかし、気候変動問題に端を発するゼロカーボンが叫ばれる今日、焼却以外の新たな検討が待たれています。

  次回以降、プラスチックごみ、海洋プラスチックの話題に移って行きます。

 

<参考文献>

1)WWFホームページ(2018):今、世界で起きている「海洋プラスチック」の問題, 2018/10/26 https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3776.html

2)廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号), 1972.12.25

3)資源・リサイクル促進センターホームページ(2021):一般廃棄物・産業廃棄物の統計データ平成30年度, http://www.cjc.or.jp/data/main_a01.html

4)千葉県木更津市公式ホームページ:ごみ処理の流れ ごみ処理の流れ|千葉県木更津市公式ホームページ (kisarazu.lg.jp)

5)環境省ホームページ(2018): 環境省_一般廃棄物の排出及び処理状況等(平成30年度)について (env.go.jp)  令和2年3月30日

6)国立環境研究所ホームページ:なぜ日本のごみのリサイクル率はヨーロッパに比べて低いのか? – 循環・廃棄物のけんきゅう [環環 KannKann] – 資源循環・廃棄物研究センター オンラインマガジン (nies.go.jp)

7)日本容器包装リサイクル協会(2020):容器包装リサイクル制度について令和2年11月 https://www.jcpra.or.jp/Portals/0/resource/manufacture/text/seido-r02.pdf

8)日本容器包装リサイクル協会: 3.対象となる容器包装|公益財団法人 日本容器包装リサイクル協会 (jcpra.or.jp)

9)リサイクルデーターブック 2020 (社)産業環境管理協会,2020年7月, p.31 Recycle Data Book 2020 (cjc.or.jp)

10)環境省(2021): 令和2年度事業 産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 令和元年度速報値(概要版), 令和3年3月 環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課, pp.33-37, R1産廃排出・処理状況調査報告書(概要版).pdf (env.go.jp)

11)日本産業機械工業会・沿岸技術研究センター(2006):港湾工事用エコスラグ利用手引書、平成18年10月, 32p.

12)日本産業機械工業会(2021):2019年度版 エコスラグ有効利用の現状とデーター集, p.1

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