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環境ノートNo.6  海洋プラスチック(2)

環境ノートNo.6   海洋プラスチック(2)

 

まんぼう

 

  海洋プラスチックの排出源は一般に「ポイ捨て」のプラスチックごみと考えられています。ポイ捨てはモラルの問題ですのでその詮索は次回以降に取っておき、その前にプラスチックごみが社会的な仕組みの中でどのように排出され、処分されるかについて述べます。

 

2.廃棄物としてのプラスチック

  私たちの生活に欠かせないプラスチック製品。食器、食品容器、事務用品、レジ袋、ペットボトル、おもちゃなど、プラスチックに触れない日はないと言っても過言ではありません。このプラスチックが日本中、世界中で毎日廃棄されています。

 

<廃プラスチックのマテリアルフロー>

  図-5にプラスチックごみの廃棄から処分に至るマテリアルフローを示します13.1)。図中の「一般系廃プラスチック」は家庭などから排出されるプラスチック製品、ペットボトル、容器包装プラスチックを指します。これに対して、産業系廃プラスチックはプラスチック製品を製造する過程で生じる破片や、不要になって廃棄処分される品のことで、産業廃棄物用語で「廃プラスチック類」と呼んでいます。

  一般廃棄物から回ってくる廃プラスチックは1年間に412万t、産業廃棄物からは438万t、合計850万tの廃プラスチックが排出されます。ごみ総排出量約4億2,250万tに対しては2%に当たります。

  図-5によれば、廃プラスチックの「有効利用率」は85%に上りますが、このうち熱利用や発電利用を差し引くと46%にとどまります。OECD(経済協力開発機構)では熱利用はリサイクルと呼んでおらず、OECDが2018年にまとめた世界のプラスチックごみに関する報告書では、日本のプラスチックのリサイクル率は20%代と評価されているそうです14)

  リサイクルできないものは焼却か、埋立てに回ります。埋立量が54万tと全廃プラスチックの6%にも上るのは、プラスチックを焼却しない炉が各地に残っていることを示しています。

図-5 廃プラスチックのマテリアルフロー(2019年度:文献13.1)より作成)

 

<プラスチックの製法15)

  後で述べるプラスチックのリサイクル方法に関わることなので、プラスチックの作り方について簡単に述べておきます。

  まず、原油や天然ガスのナフサ成分を石油化学工場でエチレン、プロピレンなどのモノマーに分解します。次に、樹脂メーカーが重合を繰り返してモノマーを結合して、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリマーを作ります。これに安定剤、充填剤などの「添加剤」を加え、米粒状のペレットにした後、成型加工メーカーに送ります。加工メーカーでは、このペレットを加熱して柔らかくしたあと様々な目的のプラスチックを成型します。こうしてペットボトルや、洗剤の容器、シート、ラップフィルム、ポリ袋、食品包装材、レトルトパウチをはじめ、あらゆる形態のプラスチック製品が生まれます。

 

<廃プラスチックの排出源>

  廃プラスチックの排出源を図-6に示します。一廃、産廃どちらもほぼ同じ量ですが、後者は業者と行政の管理の下で廃棄の工程に入りますから廃プラスチックが路上に散乱し、河川・海洋に広がっていく大きな心配はないでしょう。

  図によれば、一般系廃プラ412万t中、「包装・容器等」は77%の318万tを占めます*1)。今、海洋プラスチックで大きな問題になっているのは、「包装・容器等」に分類される一般系の廃プラスチックです。「包装・容器等」の具体的な内容は容器包装リサイクル法で定められており、図-7に示すように、日常生活で使い慣れた「いれもの」です。ペットボトルや食品用トレイ、ポリ袋、調味料ボトルなどの廃プラスチックが毎年300万t以上排出されていることになりますが、プラスチック製容器包装は廃棄の際、汚れが十分除去されていないと、後述するようにリサイクルの際のコストアップにつながっています。

*1)図-6の④では「包装・容器等/コンテナ類」は318万t、77%と記載されていますが、「コンテナ類」は記載ミスなので削除して読んでください(2021.5.9循環利用協会確認)。
a)一般系廃棄物(412万t)b)産業系廃棄物(438万t)

図-6 廃プラスチックの排出源(2019年度)13.2)

 

図-7 プラスチック製容器包装の例16)

 

<プラスチックのリサイクル>

  図-8にプラスチックのリサイクル手法と再生製品を示します17)

図-8 プラスチックのリサイクル手法と再生製品17

 

  以下に図-8に示すリサイクルについて説明を加えます。

 

<マテリアルリサイクル>

  マテリアルリサイクルでは、廃プラスチックをそのまま原料にして新しい製品をつくります(再生利用)。前出の2019年統計値13.1)では産業系廃プラスチック由来が116万t、一般系廃プラスチック由来が70万tと、前者が後者の1.7倍となっています。これは、産業系廃プラスチックは、樹脂の種類がはっきりしており、汚れや異物が少ない、量的にまとまっているので再生利用に回される割合が大きいためです18.1)

  これまで再生加工品は、物性低下、品質不安定などの弱点がありましたが、管理および技術のレベルアップによって、今ではボトル、ハンガー、文房具、洗面器、遊具、杭、ベンチ、フェンス、土木シートなど多方面にわたり使用されています。さらに近年では、自動車エンジンルーム部品、雨水貯留浸透システムユニット、青果栽培システム部品など、高性能、高機能が求められるユニットや部品にも使われているようです18.2

  プラスチックのマテリアルリサイクルは、しかし、手放しで称賛される訳ではないと産業技術総合研究所の小野氏は述べます。プラスチック製品を再生産するとき、リサイクルされた樹脂のほかに新しい樹脂を混ぜて使用する必要があり、これは「ケミカルリサイクル」「サーマルリサイクル」に比べて、エネルギー使用量や二酸化炭素排出量の削減に逆行する傾向があるからだそうです19)。すなわち、マテリアルリサイクルにはバージン資源の追加に加え、廃プラの輸送、選別、破砕、洗浄、熱加工などに多くのエネルギー消費とその結果のCO2の排出を伴うのです。同じ行政でも環境省系と経産省系で立場は若干異なると想像されます。小野氏は後者の系列ですが、私もこの考えに共感したので引用しました。

  もう一つ、上述したようにごみ、汚れの選別に多くのエネルギーと労力がかかり、特に、プラスチックのマテリアルリサイクでは、洗浄していない容器があると、きちんと洗って出されたものにも汚れが移るので、資源として出されたごみが結局燃やすごみになってしまう問題があります20)

 

<ケミカルリサイクル>

  ケミカルリサイクルとは、廃プラスチックなどを分子レベルにまで熱分解し、水素やメタノール、アンモニア、酢酸といった化学工業に必要な材料を作るための物質として再利用します。大きく、4つの方法があります;以下「プラスチックリサイクルの基礎知識18.2)」に沿って説明します。

1)原料・モノマー化  汚れたペットボトルなど、一度使われたPETボトルは、衛生面や匂いの点から新しい容器の原料には適さないとされていましたが、廃プラスチックを化学的にモノマーに分解した後、再度重合を繰り返しポリマーを生成することにより、新品樹脂と同等のリサイクル品ができるようになりました。2003年から始まったPETボトルからPETボトルからを作る、「ボトルtoボトル」事業はその一例です。
2)高炉原料化
  製鉄所では、高炉にコークスを加え酸化している鉄鉱石から酸素を取り除き(還元)、鉄を取り出します。コークスは自らも燃焼し高炉に熱を供給します。従来コークスは石炭を蒸し焼きにして作りましたが、廃プラスチックを還元剤として使う高炉が活躍しています。
3)コークス化学原料化
  コークスを作る際、コークス炉からは、コークスのほか、コークス炉ガスと炭化水素油が生成され、発電の燃料やプラスチックなどの化学原料に使われます。
4)ガス化
  廃プラスチックを破砕した後、少なめの酸素と蒸気を供給して加熱すると、プラスチックの大部分は炭化水素、一酸化炭素、そして水素になります。低温ガス化炉、高温ガス化炉を経て、最終的に合成ガス、不燃物、水砕スラグが生成・排出されます。合成ガスは水素、メタノール、アンモニア、酢酸などの化学工業原料になります。不燃物は廃プラに含まれていた金属やガラスなどです。水砕スラグは土木・建築資材として利用されます。
5)油化
  プラスチックは石油が原料なので、製造と逆のプロセスをたどれば石油に戻るはずです。しかし、高分子のプラスチックを低分子の石油状態に戻すプロセスには加熱の為のエネルギー供給が必要です。加えて、発火・爆発など安全性の問題が加わり、1970年代から開発されてきた油化技術は2010年に終わりとなりました。

 

<サーマルリサイクル>
  廃プラスチックは紙ごみの2~3倍の発熱量を持ちます。これを焼却して熱利用するのがサーマルリサイクルです。

1)固形燃料化:RDF(Refuse Derived Fuel)は生ごみやプラスチックごみなどの廃棄物を原料とした固形燃料、RPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)は高度に分別された古紙や廃材木、おがくずなどに廃プラスチック混ぜて製造した固形燃料のことです。どちらも化石燃料の代替品として、火力発電、ボイラー、セメント焼成ための燃料などに使われています。

2)セメント原・燃料化:廃プラスチック(塩ビを除く)をセメントの焼成用燃料に使用後、その灰をセメント原料にしています。

3)発電:前号の6(1)でも述べましたが、我が国のごみ処理施設は埋立処分場の延命化とエネルギー有効利用の観点から、ごみの焼却処分と温水利用・廃棄物発電に力が注がれてきました。これを促進するために、1996年(H8)以降に整備するごみ焼却施設のうち全連続式の施設については、できるだけ全ての施設について発電設備、熱供給設備等を整備する国策が施されています21)。その結果、2019年(R1)時点で発電設備のあるごみ焼却施設は全国で384か所あり、発電能力合計は2,078MWで、336万所帯分の電力を賄っているそうです18.4)

  日本の廃プラスチックはサーマルリサイクルが多く、マテリアルリサイクルが少ないことに対してOECDなどから批判があることはすでに述べました。しかし、前出の小野氏は、サーマルリサイクルについては肯定的に評価しています。以下にその趣旨を紹介します;『様々な組成の樹脂が混じり合った廃プラは、一般には「マテリアルリサイクル」は難しい。なぜなら原料としての品質が安定せず、限られた用途にしか使えない、選別や洗浄を行うのに多くのエネルギーや人手(費用)がかかるからだ。容器包装の使用を減らすという考えもありうるが、容器包装は、食品を衛生的に鮮度よく保つなど、現代の生活を安全で快適なものにするため重要な役割を果たしているものも多く、これらをゼロにするわけにはいかない・・・これに対して、プラスチックは熱量が大きいことから、焼却して熱回収し、その熱を有効に使う方が、総合的に得られるメリットが大きい・・・廃プラの「サーマルリサイクル」は、日本で主流の「ごみは焼却して熱回収」という流れとも合致し、熱回収の効率を上げる技術開発もセットで進められてきたなかで優位になっている・・・』と述べています19)

 

<廃プラの海外輸出>
  図-5で廃プラスチックのマテリアルリサイクル(再生利用)は186万tであることを示しましたが、このうち海外に輸出される量は79万t(43%)にも達しています13.3)。ただし、輸出される廃プラスチックはほとんどが産廃からのもので、一廃からの廃プラは国内で処理されています22)

  廃プラスチック類を含めたいわゆる資源ごみは、長年にわたり中国や東南アジア諸国に有価の再生資源として輸出されてきました。近年建築物の解体に伴い排出される混合廃棄物をはじめとして汚れの混じった多種多様なごみが大量に持ち込まれ、これらの処理・処分や放置が各国内で環境問題を引き起こしています。2018年1月中国政府は大気・土壌汚染への批判の高まりを受けて、プラスチックごみ輸入を原則禁止としました。そのため、日本は廃プラの輸出受け入れ先を東南アジア、台湾などに振り向けていますが、これらの国も輸入基準を厳格化あるいは輸入禁止にしており、日本の廃プラスチックごみは「自分で出したごみは自分で片づける」姿勢を求められています22),23)。後ろめたいごみ輸出で国の姿勢を問われ、途上国の輸入禁止政策で慌てて自国内処理場建設に走っているのは、欧米先進諸国も同様です24.1)

 

<プラスチックのリサイクルの難しさ>
  一般廃棄物で分別排出された「プラスチックごみ(容器包装プラスチック)」は、処理施設に届いた後、人の手によって選別され、汚れているプラスチックごみは洗浄に無駄な水とエネルギーを要するため焼却に回されます。また、自治体によっては家庭から出されたプラスチックごみ袋の中に、さらに別のごみ袋(二重袋)があると、袋をほどいて異物がないかチェックする手間が生じます。このように、プラごみの資源化には、排出する人が想像しない大きな労力とエネルギーコストがかかっています。

  また図-5に示したように、廃プラスチック全体の未利用率は15%もあります。単純焼却は温暖化ガス排出の原因になりますし、埋立て量も54万tに上ります。また、輸出されたプラごみの一部は有効にリサイクルされず、焼却されたり、回りまわって海洋プラスチックの一因にもなっているとのことです。

  こういった問題に加え、この1-2年で急速に大問題になりつつある気候変動抑止に向けた「ゼロカーボン」の動きは、廃プラのリサイクル工程にも大きな転換を求めるでしょう。

  新聞やテレビで廃棄物のリサイクルが声高に叫ばれていますが、「資源ごみ」として捨てられるプラスチックがどのような流れで処分されているのかよく理解する必要があります。「プラスチックのリサイクル」は様々な問題を抱えており、有効な解決策を見出すのは難しいようです。強いて言えば、「過剰なプラスチックの供給=消費を控える」ことが、解決に近づく一歩ではないかと思います。

  次回は、いよいよ本題の海洋プラスチックについて述べます。

 

<参考文献>

13)プラスチック循環利用協会ホームページ(2020):2019年プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況 マテリアルフロー図, 2020年12月 プラ協マテリアル2019.indd (pwmi.or.jp)13.1) p.3,  13.2)p.4,  13.3)p.5

14)Lifestyle生活ホームページ(2020):HATCH編集部, 生活2020.06.18update: 2020.09.19プラスチックごみ再生の究極形態「ケミカルリサイクル」はどこまで進むか – HATCH |自然電力のメディア (shizen-hatch.net)

15)プラスチックの基礎知識|プラスチックの世界 |ポリオレフィン等衛生協議会 (jhospa.gr.jp)

16)地球の気持ちホームページ(2020):プラスチックごみの捨て方や分別方法をやさしく解説 | 地球のきもち (chikyu-kimochi.com)

17)HATCH編集部(2020):  プラスチックごみ再生の究極形態「ケミカルリサイクル」はどこまで進むか – HATCH |自然電力のメディア (shizen-hatch.net) 2020.06.18update: 2020.09.19

18)プラスチック循環利用協会ホームページ:プラスチックリサイクルの基礎知識 2021 panf1.pdf (pwmi.or.jp)

18.1) p.8,  18.2)p.17, 18.3)pp.19-22,  18.4)pp.23-24

19)小野恭子ブログ(2019): 日本のプラスチックごみの行方を知って、冷静な議論を / 小野恭子 / リスク評価手法の開発 | SYNODOS -シノドス-  2019.11.12

20)朝日新聞デジタル(2020):汚れたプラは「燃やすごみ」ソースべったり、手で仕分け [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル (asahi.com), 2020.5.29

21)環境省廃棄物利用高度化マニュアル2019.pdf

22)藤田 淳(2020):一般廃棄物処理施設における廃プラ受入れについての技術的検討, 2020年5月28日, ㈱神鋼環境ソリューション, 廃棄物資源循環学会 公開セミナ

23)日本貿易振興機構(JETRO)ホームページ:行き場を失う日本の廃プラスチック | どうする?世界のプラスチック – 特集 – 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ (jetro.go.jp)

24) ナタリー・ゴンタール, 臼井美子監訳(2021):プラスチックと歩む その誕生から持続可能な世界を目指すまで, 2021.3.12,  原書房, 227p.

24.1) p.136-139

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