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環境ノートNo.1  再生可能エネルギーの現状(2)

環境ノートNo.1  再生可能エネルギーの現状(2)

まんぼう

前回までに、地球温暖化防止に関連して、日本のエネルギー事情と各国の再生可能エネルギーの開発状況について述べてきました。今回は、再生可能エネルギーの中でも急速に発展しつつある風力発電と今後の技術革新について述べます。

4. 風力発電と洋上風力発電

<風力発電>

再生可能エネルギーのうちで、風力発電は、オランダ・デンマークをはじめ北欧を中心に1970年ごろから盛んになり、2016年の世界の累積導入量は500GW(5億KW)* 16に至っています。日本でも1980年代から徐々に設置されるようになりましたが、2016年で336万KWのレベルで、中国の1.7億KW、アメリカの8000万KW,ドイツの5000万KW*16など、先進諸国の数十分の一の規模です。

風力発電は2-3年の風況調査を経て立地検討がなされますが、一定方向の3~5m/s以上(6.5m/sが望ましい)の安定した風が、年間を通じて頻繁に吹く地域が適地とされます。そのため山岳地帯の稜線が選ばれますが、鉄塔の材料や翼を山岳に運搬するには、山林を切り開いて道路を作ることを伴うので、自然破壊につながることも住民の反感を買う原因となります。さらに、風車の短所として、風力の変動を補い需給をバランスさせるために火力発電所が必要となる、台風などによる施設の損傷の可能性などがあげられます。2003年には台風14号により沖縄の風車6基が倒壊やブレード破損、ナセルの損傷などの被害を受けました*17)。また、風車の翼に鳥が衝突する(バードストライク)、翼が回転する時低周波の騒音が発生するなどの問題があります。

<洋上風力発電>

わが国では、山岳地帯に代わって、高風速が得やすい港湾区域の遊休地に着目し、北海道瀬棚港や山形県酒田港などに実証研究の一環として設置されてきました。しかし、陸上部ではだんだん適地も少なくなってきました。この点は先進国のヨーロッパでも同様です。海上は風にとっての障害物が少なく風速は陸上より20%以上も高いこと(出力は風速の3乗)、地形による渦などの影響が少ないこと、北欧では水深の浅い海が広がり基礎の設置コストが安いこと、海底石油掘削が盛んで既存施設のインフラを利用しやすいこと、石油掘削装置を設置する高い技術が風車の海上設置にも応用できることなどの理由で、陸上より1.5~2.6倍の資本が必要であるにも関わらず、近年、ヨーロッパや中国を中心に洋上風力発電施設の設置件数が急速に増加してきました。電子工業会(EIA)によれば、2018-2019年の間に世界全体で5.2GWの新規開発(23%増)がなされ、全体で27GWの洋上風力の容量となっています*18)

図-5 風車基礎の種類 Wikipediaより*19)

 

デンマークの洋上風力発電所例*20)
オランダの洋上風力発電所例(1.5GW)image Credit: Vattenfall*21)

  写真-2 洋上風力発電所の例

 

海上では立地の制約が少ないので、年々風車は大型化しています。2020年5月にはイギリスの海岸で、1基14,000KW(14MW)、高さ150m、翼長140mの巨大風車100基が設置されることになりました*22)

アジアでも、中国を中心として洋上風力発電の伸びは顕著で、2017年から2026年にかけて26%の成長が見込まれています*23)。中国のあと台湾、韓国、日本、インドが続きます。近年、台湾では「フォルモサ1~3」*24)と呼ばれる洋上風力発電所を開発中で(一部運転開始済み)2030年完成すると総出力200万KW世界一の洋上発電所となる。

洋上風力先進国の後塵を拝する我が国は、2019年より4か所の海域を設定して、本格的な洋上風力発電計画を進めています。陸上風車と違って、安定した高出力電源となりうるのですが、問題はわが国の海岸は急深で基礎設置費用が高い、何kmにもわたって海底送電線を敷設しなければならない、塩分環境下では腐食対策などメインテナンス費用がかかるなどの他、陸続きのヨーロッパと違い電力系統が日本のみに孤立しているので安定電源供給にコストがかかる、わが国では漁業関係者との協調が特に強く求められるなどの問題があります。

大水深での風車基礎としては、北海の石油掘削装置の技術を応用した、浮体式基礎の開発も進められています。わが国でも長崎県上五島沖では、2015年から2MWの浮体式風力発電の商用運転を開始しました。

5.さらなる脱炭素へ

再生可能エネルギー開発では先進諸国に大きく後れを取っている日本ですが、温暖化ガス排出を低減させる方法は再生可能エネルギーだけではありません。日本がこれまで世界をリードしてきた省エネ技術に加え、排出されるCO2ガスを固定化して地下深くに埋め戻す(CCS)技術、獲得したエネルギーを安全に貯める技術の開発も行われています。風力、太陽光などの「変動電力」を蓄電したり、水の電気分解により水素を発生させて高圧容器に貯める、あるいは発生した水素をより安全なメタンガスに変換するなどの技術開発も行われています。これら3つの脱炭素技術は、伸びない原子力発電を補う上でも、21世紀の我が国エネルギー政策の大きな柱となるものと期待されます。

<参考文献>

*16)牛山泉(2017.12.11):なぜ日本では「風力発電」導入が遅れていのか?

*17)沖縄電力株式会社(H16.11):台風14号による風力発電設備の倒壊等事故調査報告について(概要)5-1.pdf

*18)Offshore Engineer(2020.2): Global Offshore Wind Capacity Reaches 27GW , February 20, 2020

*19)Wikipedia:洋上風力発電

*20)Wikipedia:デンマークの洋上風力発電所

*21)OE(2020.6.5):World’s Largest Offshore Wind Farm Gets Go-Ahead

*22)OE(2020.6.22): Innogy Picks Most Powerful Wind Turbine for Its Largest Offshore Wind Project, June 22, 2020

*23) H&Iグローバルリサーチ株式会社(2016.1):洋上風力発電の世界市場2016-2026

*24)環境金融研究機構(RIEF)(2020.3.0): Formosa(フォルモサ)3

お問い合わせ 0120-158-455